鹿角の里に住んでいた八郎太郎は、仲間二人と一緒に山仕事に出かけました。食事の準備で谷川に水をくみに行った八郎太郎は、三匹のイワナをつかまえ、串に刺して焼きながら二人の仲間が帰るのを待っていました。
ところが、あまりのおいしそうな香りに、三匹残らず食べてしまったのです。
山のおきてでは、山で穫れたものは仲よく分けることになっていたのですが、八郎太郎はこのおきてを破ってしまったのです。するとどうでしょう。胸が焼けるように熱くなり、のどが渇きます。谷川に顔をつけ、がぶがぶと水を飲み続けた八郎太郎は、三十余丈(約90m)の龍に変身してしまいました。
この八郎龍がせき止めてつくったのが十和田湖です。八郎太郎は十和田湖の主として、長い間静かに暮らしていました。 しかし、湖の主の座をかけた南祖坊との戦いに破れ、八郎太郎は十和田湖を追われてしまいました。それから新しい住みかを探して歩き続けた八郎太郎は、男鹿の島が見えるところまでやってきて、大地震と大洪水をおこし、大きな湖をつくりました。これが八郎潟です。
時がたち、八郎潟におちついた八郎太郎は田沢湖の辰子姫と出会い、冬の間は田沢湖で二人仲よく暮らすようになりました。そのため田沢湖は二人の仲のようにますます深くなり、冬でも凍ることがありません。反対に、八郎潟はしだいに浅くなり、八郎太郎が留守にしている冬は、一面に凍りつくようになったといわれています。
八郎太郎は冬になると旅姿になって、田沢湖の辰子姫のもとに通いました。 昭和町で毎年8月16日に行われる「八郎祭り」は、秋田の三湖に伝わる、この壮大な伝説を具現化したものです。体長64mの八郎龍、そして辰子龍が男若衆、女若衆に担がれ町内を練り歩きます。 |